「車掌のお仕事」

「総合職で車掌やるの?」

前回の記事で、総合職のキャリアパスについて書きました。

前回は、まず事務系の総合職が皆経験する駅員について紹介しましたが、今日は乗務員編です。

鉄道の乗務員は大きくわけて、車掌と運転士の2つに大別されます。

鉄道に詳しくない人ですと、運転士と聞けば容易に仕事内容を想像できるのですが、車掌って正直何やってるかわかんねーって人も多いと思いますので簡単に紹介を。

車掌は、 電車を掌握する列車長の役割を持ってます。主な業務は、車内の空調管理や社内放送、駅でのドアの開閉、また列車防護要員としての重責も担っています。

列車防護って聞きなれない用語だと思いますが、鉄道は車と違って危険を察知してもすぐには止まれません。在来線ですと、時速120キロ位で走行していて、非常ブレーキをかけたとしても、停止するのに600mほどかかるといわれていますので、人の目で危険を察知してから運転士がブレーキをかけても間に合わないんですね。

そのため、車掌は自身が乗務する列車が隣接する線路を支障した場合、隣接して走ってくる列車を止める義務を負っています。これを怠ると大きな事故が発生した過去もありますので、責任重大ですね。もし詳しく知りたい方は「三河島事故」という事故を検索してみてください。

「車掌試験にチャレンジ」

車掌になるには適性検査等の社内試験に合格しないとなることは出来ません。車掌に国家資格はいりませんが、ここで試験に落ちてしまうと、少なくともその年の車掌登用は見送られることになります。

総合職は現場にいる期間が限られていますので、車掌試験に1度落ちてしまうと乗務員への道は閉ざされてしまうケースが多いですね。

晴れて社内試験をクリアしたら、今度は総合研修でその年に車掌試験に受かった同期達と一緒に研修を受けます。

そこでは、共同部屋で共同生活をしますので、協調性が求められますし、総合職として現業職採用の社員と一緒になって人間関係を構築していく必要があります。総合職で入社するとこのように異動スパンは現業職と違って短く、毎回新しいメンバーとの人間関係構築が必要となるため、コミュ力が非常に重要になってくるんですね。

ちなみに私はそういうの結構得意な部類で、現業職の人達ともめちゃくちゃ打ち解けて、研修も楽しかった思い出があります。まだ当時は若くて勢いもありましたしね。ただ、今の歳になって、また同じ研修を受けるのはなんていうかノリが合わず苦労するかもですが。。。

この研修はふるい落とすためのものではないので、基本的に授業を受けて、真面目にやっていればまず大丈夫です。

研修期間は1か月程度だったと記憶してますが、その研修が終わるといよいよ各職場で見習い車掌として実際の列車に乗務します。

鉄道の世界は徒弟制度となっていて、見習いの期間は同じ師匠が付きっきりで指導します。

この師匠との相性が悪いと、見習いの期間が非常に苦しい時間となります。

車掌も駅員同様、泊まり勤務が主体ですから、出勤してから翌日開放されるまで、就寝箇所も一緒(添い寝じゃなくて二段ベッドね)となります。最近は、就寝箇所は別部屋になってきてるみたいですが、とにかく相性が悪い師匠とずっと一緒だと、もう見習い期間が地獄で地獄でという人もいます。

ちなみに私は師匠に恵まれて楽しい見習い生活を送らせてもらいましたが、私の同期はかなり厳しめの師匠に当たってしまい、当時は苦しい見習い生活を送っていたのを記憶しています。

大体この見習い期間というのも乗務員職場によって違うのですが、2~3か月程でしょうか。それが終わるとようやく一人乗務スタートとなります。

今でも、一人乗務を開始したその日のことを鮮明に覚えていますが、あの乗務員室に自分しかいない不思議な感覚と、何があっても自分ひとりで対処するんだ!という強い決意がありましたね。でも、振り返ってみると、運転士になった時より、車掌の一人乗務の時の方が緊張しました。

それは、運転士の話はまた別の機会にするとして、車掌の見習い期間が短いというのも影響があると思いますが、この大きな電車の乗務員として自分が働いていることの誇りなど、本当に多くのものを得る経験になったからじゃないかと思っています。

「車掌のトイレ事情」

さて、車掌とて人間です。ごはんも食べればおしっこもします。

では、乗務中にトイレに行きたくなったらどうするのでしょう。

例えば、長距離を走る電車には客室にトイレってあるんですよ。なので、駅と駅の間だったら客室のトイレで用を済ますという手段があります。

でも、首都圏の山手線みたいな通勤電車にはトイレはございませぬ。こういった電車に乗務している車掌は、トイレ事情は切実で、なるべく乗務前は水分を取らないとか、乗務開始ギリギリにトイレに行っておく等、各人で工夫して乗り切ってます。

ただですね、そういう風に万全を期していても、時に急激に尿意・便意を催すのが人間というものです。

しかも不思議なことに、行きたくなるのはまだ乗務開始してから1駅しか走行してなく、あと1時間以上は降りられないっていう、いわば序盤戦でこの厄介な生理現象はやってくるんですよ。これ、結構乗務員あるあるで盛り上がりますので、覚えておいてください(笑)

そうなった場合、幾つか選択肢があります。

まずは、日本人が大好きな我慢。「今の感じならあと1時間ならなんとか精神力で耐えられるぜ。俺の膀胱をなめるな」みたいな根性見せます。

ただ、この生理現象を我慢していると、車掌は安全に直結している業務なので、そちらの集中力が落ちる可能性があるので、あんまりおすすめしません。私は我慢派でしたが。。。

ですので、指令という、電車の走行を一元管理している箇所へ無線を飛ばして、「〇〇電車の車掌なのですが、便意が限界なので次駅のトイレに行きたいです」と申告すれば電車を遅らせてもいいことになっている会社が多いと思います。

でもですね、この無線というのが曲者でありまして、無線というのは同じ様に走行している他の電車にも一律に内容が聞かれてしまうんですね。これは、当然事故の情報なども共有するため必要なことなのですが、自分がうんこに行きたくて限界!という、ちょっと恥ずかしい情報も他の乗務員に共有されてしまうので、人間心理では避けたいとこなんですよね。

ただ、我慢して漏らしてしまうより全然マシですし、生きている以上、人間の生理現象ですから全く仕方ないことなんですけど、当時の私もこれは最終手段だな、と思ってました。

「車掌を降りる日」

さて、このように遣り甲斐もあって、楽しい車掌生活にも総合職の場合は割と早く終わりが来ます。どんなに長くても1年程度で乗務を降りることになります。

私は最後の乗務の日も、ものすごくよく覚えてますね。短い間でしたが、とっても寂しかったです。

車掌をしていると、もちろん楽しいことばかりではなく、人身事故にあったり、電車のダイヤが乱れたり大変なこともたくさんあるんですね。

けど、本当にいいこともたくさんあります。

例えば、私は土日の勤務が大好きでした。それは、駅で小さい子供が我々車掌に向かってたくさん手を振ってくれるのです。車掌には列車進入時と退出時に、列車状態監視といって、ホームと電車で人が接触しないか等を顔を出して監視しています。

すると、小さい子が駅を通過するときにホーム上で手を振ってくれるんですよね。

これが、本当に嬉しくて嬉しくて。小さい子に夢を与えることが出来る仕事なんだなぁ、と働いていながらも誇りを持っていました。

また、もう一回車掌を出来るなら私は喜んでやりたいと思います。

あと、もう一つ大好きだったのは月曜日の朝の明け番の勤務です。一般的なサラリーマンて土日が休みですので、月曜日は車内がどんよりしてるんですよね。

そんな車内をしり目に、自分はこの乗務が終わったら仕事終わりだーなんて思いが、テンションを上げるというかなんというか・・・なんか性格悪いですね(笑)

ただ、ちょっと暗い話題で恐縮なのですが、月曜日の朝は人身事故の発生率が高いので、日月の泊まり勤務は緊張感が一段階上というのも事実ありました。

このブログ書いていて、当時の記憶が蘇ってきて、車掌の仕事楽しかったなーと改めて思いました。今の仕事もそう思えたらいいのですが・・・なかなか難しいですね。

車掌を降りてから、私は次はどうなったのか・・・これはまた次の機会にお話しますね。

それでは、また!

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