「逃げることは悪いことではない」

逃げることは悪いことなの?

日本人て逃げるのが悪いこと、恥みたいな感覚ありませんか?今回は「逃げ」について、考えてみたいと思います。

2016年のドラマで「逃げるは恥だが役に立つ」ってありましたよね。ガッキー主演で非常に大ヒットを記録したので記憶に新しいところかもしれません。そもそもなんで逃げることが悪いことっていう感覚、価値観が私たちの中にはあるんでしょうか。

辛いこと・我慢できないことから逃げるのは自分を守る術

そもそも、なぜ我々はそんなに逃げることが悪いことや恥だと感じてしまうのでしょうか。私は太平洋戦争の頃の歴史に興味があり、九州の知覧にある知覧特攻記念館に行ったことがあります。そこでは、今の私よりもっともっと若い、それこそ20歳そこそこの若者が敵の空母や戦艦目指して航空機ごと体当たりするという、非常に痛ましい過去について、当時の手記などが残っています。それを読んだり、当時の写真を見たりして私は本当にいたたまれない気持ちになりました。ここにも逃げることの出来なかった日本人の姿があったのではないでしょうか。私は当然戦時中は生まれてませんし、当時の状況や彼等がおかれていた心理状態まで正確にわかるというには不可能です。それでも、当時特攻隊に志願したり、特攻隊で散っていった若者が「逃げる」という考えをもっていたのであれば・・・と思うことがあります。だって、目的は敵の空母や戦艦を沈めることですよね。それなら敵艦に魚雷や爆弾を命中させればいいんだと思います。当時は燃料も片道分しか用意されていなかったので当時の状況では不可能なのかもしれませんが、そもそも練度が低くて敵艦に魚雷や爆弾を命中できないパイロットが、航空機を敵艦に正確に命中させることが難しいなんて、容易に想定できると思います。でも、当時逃げるという選択肢することは出来なかった。もし、逃げて帰ってきたら、よく聞く「恥ずかしながら、〇〇一等兵帰還しました。」となるわけです。他の皆が特攻で散っていったのに、自分は恥ずかしながら特攻することが出来なかった。自分はなんて情けないんだ、と自責の念にも駆られるわけです。また、当然のように上官から責められることもあり、特攻以外の選択肢はなかったのですから、これは洗脳だと思います。

それでは、現代の日本の労働環境に戻しましょう。たとえば、あなたが仕事で本当辛い状況に陥ったとします。この辛い状況というのは、人によってまちまちですが、例えば

・一人では抱えきれない業務で過労死しそうな長時間労働になっている

・とにかく上司から厳しい叱責をうけ、パワハラに耐えながら会社に行っている

・誰も仕事をフォローしてくれず、管理職でもないのに常にひとりで孤立無援状態

ストレス耐性は人によってまちまちですし、ある人は人から怒られるのはへっちゃらだけど、一人で仕事を抱え込んで追い込まれるのがきつい、とか、ある人は一人で仕事を解いていくのは大して苦痛ではないけれど、とにかく上司との人間関係が苦手・・・などあると思います。

ここで、重要なのはこのままこの環境で仕事を続けていて、自分の心身の健康は守られるのか?というのを判断できる心です。上記で書いたように、戦時中にはそもそも特攻以外の選択肢がなかったのかもしれません。それでも、特攻しなかった人もおり、著書も出ております。翻って、現在はどんなにブラック会社でも戦時中ではありません。そんな時、「逃げる」という判断をすることで自分を守ることが出来るのは自分だけということです。真面目な人は「皆、辛いのに自分だけ逃げて本当に自分は弱い奴だ」とか、「逃げるなんて情けない奴だ」と自分に厳しく自分を責めることでしょう。しかし、よく考えてください。あなたが通勤途中にナイフを持った通り魔が前から現れたとします。普通に考えて、前からそんな危ない人間が来たら当然逃げますよね。なんで逃げるのか?それは、このままぼーっとしていたら、その通り魔に刺されて最悪命を落とすことがわかっているからですよね。そこで、逃げたとして後から「あー私は通り魔から逃げてずるいやつだ。」とか思います?思わないですよね。これでは、「いや、私があの通り魔を制圧していれば、もっと被害を抑えることが出来たかも」と考える真面目な人もいるかもしれません。でも、この後者の考えをもつ人って通り魔を取り押さえることが出来るかもしれない、なんらかの根拠のある自信がある人なのです。例えば格闘技経験者とかですね。でも、前から来たのがナイフを持った通り魔ではなく、100頭のライオンだったらどうでしょうか。これなら、自分が格闘技をやっていようがなんだろうがまず絶対勝てませんよね。それで、逃げたことで自分が情けないなんて考える人はいるでしょうか。

結局のところ、仕事も一緒です。もう限界だ。このままだと、自分の心身が壊されるというのは、通り魔でぐさっとナイフで刺されるのか、ゆっくり「ストレス」という名のナイフで体を刺されているかの違いでしかないのです。そう考えると逃げるという選択肢は自分を守る術になるのです。もし逃げることは負けだ、と思う心があるのなら、本当の負けは、逃げないで逃げないで限界まで我慢して、結果心身共に壊してしまい再起不能になるとかじゃないでしょうか。

逃げても健康でさえあればチャンスはまた来る

結局のところ、人間は健康でさえあればまたチャンスは来るのです。健康でなければ今働いてることは出来てないでしょう。ですので、今もし辛い環境で悩んでいて、このまま我慢しても状況が変わらないようだったら、転職や休職などの選択肢を選んでください。本当に体を壊してしまってからでは遅いのです。

それでも逃げてはいけないときもある

私はなんでもかんでも逃げてくださいとは言ってません。もし、自分の大切な人に危害を加える人間がいたとしたら、その人を守れないで逃げたとしたら、それが本当の意味での「逃げ」です。人生には時には戦わないといけない時もあります。逃げてもいい時と、逃げずに立ち向かわなくてはいけないとき。この二つの違いを、精神的に健康な時に一度じっくり考えておく必要があります。本当にきつくなると、人間は正常な判断が出来なくなりますので、精神的に健康な時に手帳かなにかに書き記しておくといいかもしれませんね。

とにかく、精神的に健康でさえあればチャンスは必ずやってくる。これを忘れないでくださいね。