ホームでのある日の日常~駅のホームから転落した人がいたら~

「駅のホームから線路へ転落」

こんにちは、とさやです。

最近は涼しい日が続いてますので過ごしやすいですね。

さて、今回は電車を利用する人ならいつ遭遇してもおかしくない場面の対処法についてお話します。鉄道会社社員から皆様へお伝えしたい安全管理の話なので大切な人を守るためにもぜひ読んでください。

「ある朝の通勤時」

いつもの通勤電車。

あなたは眠い目をこすりながら、スマホで朝のニュースを見ています。

会社に着いたら午前中は昨日の営業報告でそのあと会議か・・・気が重いな、と憂鬱な気持ちになっていたところ、突然近くで「どさっ」と大きな音がしてあなたは現実に引き戻されました。

驚いて音のした方を見ていると、さっきまで隣にいたはずOLさんがいません。んんっ??一瞬混乱したあなたでしたが、その次の瞬間線路に先ほどまでいた女性が横たわっているのを見つけました。

朝早い時間ですので、貧血でも起こしたのでしょうか。とにかくこのままだと電車に惹かれてしまいます。一大事です。

朝早い時間だったので乗客もまばらで、あなた以外彼女の転落に気付いた人はいない模様です。

あなたはこう考えます。

「よし、俺も高校球児としてならしたくらいの男だ。最近はまったく運動してなくてお腹も出た立派なおじさんになってしまったが、女性ひとりくらい簡単に引き上げられるだろう

あなたはホームの端に駆け寄り、線路に転落した女性に手を差し伸べます。

女性も意識はありますが、転落の際に足を怪我したようで自力ではホームにあがることは出来ないようですので、あなたの手につかまります。

よしっ、これで引き上げれば女性も助かるし、俺もヒーローだな・・・と思って両手でひきあげました・・・が。

「そう簡単には引き上げられない」

両手に力をこめて引き上げようと力を込めましたが、全然女性を引き上げることが出来ません。

そればかりか、引っ張ろうとしたときに、自分まで線路に引き込まれそうになります。

あなたはこう思います。

「うう、思い。こんなことになるならもっと筋トレしておけばよかった」と。

そうこうしているうちに、電車接近のアナウンスがなります。

電車が近づいてくることを知ってあなたはますます焦ってしまい、反対に力が入らなくなってしまいます。

わーどうしようどうしようと頭はパニック状態。

軽い女性なら簡単に引き上げられると思っていたのに、これだったら自分も降りて担いだ方が良かったのか・・・等々考えが浮かんでは消え、救助に集中できません。

今回、あなたがとった行動は非常に勇敢な行動でした。

しかし、これでは助けるどころか、自分も線路に落ちて死んでしまうかもしれません。

では、一体どのようにするのが正解だったのでしょうか。

「ホームから転落した人を見つけた時は」

「まずは非常ボタンを押す」

まず、ホームから転落した人を見つけた場合はとにかく焦りますよね。

先ほどの男性の様に、すぐにでも助けようと現場に向かうと思います。

でも、まず何より最初にして頂きたいことは、ホーム上に設置された非常ボタンを押すことです。

電車は車と違って重さも桁違いですし、なにより車輪もレールも鉄なので、摩擦係数が低くて止まるのに距離が必要なんです。

なので、運転士がホーム上から線路に人が落ちているのを確認してからブレーキをかけたとしても速度によっては間に合いません。というか、ほとんどの場合で間に合わないと考えてもらった方がいいです。

ですので、まずは電車を止めることが先決です。

非常ボタンを押せば、電車の運転士に非常を知らせる信号が出て、転落者を確認する前にブレーキをかけて停止します。

それと併せて、非常ボタンが押されれば無人駅でなければ駅員も押された場所にかけつけますし、あるゆる関係各所に自動で連絡がいく仕組みになっています。

これが一番大切です。

「救助者の安全を確保する」

これはレスキューの現場の基本なんですが、まずは要救助者の前に救助者の安全を確保するのが先です。

なぜかといえば、二次災害を防ぐためです。救助者が災害にあってしまったら要救助者を助けることも出来なくなりますし、被害者を増やしてしまうようなことはあってはならないのです。

今回のケースだと、まず救助者の安全を確保するために電車を止めるのが優先というわけです。

そして、駆けつけた駅員の指示に従ってください。

あと、ホーム上から人をひきあげるのも相当な力自慢じゃないと無理です。

これは、重力の関係で、転落者の体重と自分の体重の一部を支えて引き上げることになるからなのですが、それを腕力や背筋力のみに頼って、最大の筋力である下半身をほとんど使えないことに由来します。

鉄道会社の研修では、人形を使ってホーム上から引き上げようとしたらどうなるか、というカリキュラムがある会社もあるのですが、人形であっても難しいです。

なので、無理をしてはいけませんよ。

「線路に降りるのも危険」

ホームからでは引き上げるのが大変というのならば、自分も線路に降りて担いだ方が早いという風に考える人も多いかもしれません。

しかし、これも非常に危険です。

まず、隣接線がある場合は隣の線路を走ってきた電車に轢かれかねません。

電車は時に音もなく近づいてきます。

本当に、いつのまにか近くに来ていて、それに気付かずになくなってしまった人もたくさんいるんです。

加えて、もし電車が止まってくれなかったら自分も当然轢かれてしまいます。

これも、救助者の安全を確保出来てないですからね。

それに、地下鉄では線路には思わぬところに高圧ケーブルが引かれていて、接触して感電死する危険性もあるんです。特に一部の地下鉄では、電車への送電線が線路脇にあって、これに触れるとほぼ確実に感電死します。

このような理由で、線路にも降りないでくださいね。

「まとめ」

とにかく、電車が止まったことを確認してから救助に入りのが鉄則です。

そのためにも、とにかく非常ボタンを押してください。

人が落ちているのを見たら躊躇はいりません。大きな音がする場合もありますが、異常時に遠慮はいりませんよ。

ちなみに、鉄道会社の社員が電車をホームで待つ場合、ホームの非常ボタンの近くだったり、もしくはどこに非常ボタンがあるかを事前に見つけておく人が多いです。

皆さんも、今度ご自身がよく使う駅の非常ボタンがどこにあるか、確認してみてくださいね。

ちなみに、最後に。

電車が進入してきている直前で人が転落した場合は非常ボタンを押しても電車は止まりません。

なので、皆さんも電車進入直前は必ず黄色い線の内側にいることを強くお勧めしますよ。

それでは、また。